天の恵み

−雨水利用のお勧め− その2

既に商品化されていた「雨水タンク」

 ニーズがあれば商売になる、これが世の常です、こんな物があれば良いが、と思った頃には 大抵どこかの誰かが造って売っているはすだ、こう思って通販カタログをめくっていましたところ あるある!!ありました。
 ステンレスで円筒形のタンクの横に、ゴミやほこりを排除し、純水だけをタンクに取り込む 装置を取り付けた本格的な商品です。
 これだ!! すぐ飛び付こうとしましたが問題は値段です、250リットル型で 定価が70,000円。 ウーン、困った、まてよ、そこからが積算資格者です、コスト計算をせずには おれません。と言っても計算は簡単です、2ヶ月に1度支払う水道料を使用量で割るだけのこと。 結果1m3当り約200円という事が分かりました。月に何m3使うから年間いくら、装置の寿命を 仮に15年として採算に合うかどうか。全然合いません、そんな姑息な計算で、このステンレスタンク は一旦見送ることにしましたが頭の中から消えた訳ではありません。
 一方、我家のタンクはポリエチレン製の為、日光が差し込むからでしょう、溜まった水にアオコが 発生し、水が青くなるやら、樋から直接取水しますので落ち葉や塵、時には蝶や蝉の死骸なども 流れ込んで来ます。何とかしてきれいな水を貯めたいが・・・・。こんな日が数ヶ月続きました。


お客様第1号! 注文が舞い込む

 私に限らず、仕事と限られた趣味だけをやっていますとどうしても世間が狭くなってしまいます。 50才を過ぎた頃からこの点が気になり、友人の勧めでロータリークラブに入れて貰いました。
 その月例会で私が何かお話をしなければならない番が廻って参りました。 実は私は手先が少し器用なのと、文を書くのは苦にならないのですが、お喋りは大の苦手です、 出来ることならその順は「パス」したいところですが、そうも参りません何とかしてノルマの 30分をこなさなくてはならないことになりました。
 久し振りにプレッシャーを感じながら、初めの15分は、例によって建築の積算とは・・・。 後の15分は趣味である家具造りと、刃物研ぎの話に加えて最近加えた「雨水利用」の様子も 少し紹介し、ようやく役目を果たしました。
 ところがその1ヵ月後の例会に出た私に 思い掛けないプレゼントが待っていました。ある先輩会員が、「潮田君、僕の家にも雨水タンクを 取り付けてくれないかね、出来れば大きいヤツを」。「エエッ!私に注文を頂くんですか、 有難うございます。」かくして注文第1号です。


設備屋の職人になった気分

 雨水タンクの業界、と言ってもまだ始まって5年くらいしか経っていないので、メーカーは ポリエチレン系が、セキスイを筆頭に計7社、それにステンレス系が1社、こんな状態だそうで、 そのステンレス製メーカー、長野県の「大成」。(ゼネコンの大成ではない)という会社に 「1台でも送ってくれますか?」と尋ねたところ、「喜んで出します、どうでしょう、潮田さんが そちらの代理店になってもらえませんか?」と言われまたびっくりです。
 積算事務所が雨水タンクの代理店?。面白そうだ、やってみよう。早速代理店契約?を締結し、 発注です。まもなくステンレス製500リットルのピカピカのタンクがお客さま宅に届けられました。
 私は現在こそデスクワークですが、元々は現場員、それも、よく動き回る方の。 ですから現場取付けとなると腕がムズムズします。このタンクは重量が50sあるので、 一人では動かし難く、仲の良いい友人に応援を求め、日曜日、2人掛りで取り付け工事を行って 参りました。 このお宅は庭が広く、遠くへ水を飛ばしたいとのことで、タンク下部へ加圧ポンプを セットし、設置も含め200,000円です。それで、原価はいくらか?、皆さん気になるところ でしょうが、それは企業秘密ということで、ここではボカしておきましょう。
 このお客様もそれ以降、私と同様、雨降りを待ちこがれる「雨待ち族」となり、以降例会で顔を 合せる度「この間の雨で一杯になったよ」とか「最近降らないから空っぽだよ」など、 話題は専ら雨水の事になり、そのお顔はニコニコです。
 このお客様には内緒ですが、現在、我家のバルコニーに座っているステンレス製250リットルの タンクは、この時の利益(取り付け手間含む)を元手に奮発したものであります。
 ちなみに、このステンレスタンクは日光が入らないので、アオコもボウフラも発生しません、 水の入口にはセレクターと言って、ゴミや不純物、それに降り始めの酸度の高い雨を除外する装置が 付いていますので、貯り水と言えども、驚くほどきれいです。但し、飲むにはちょっと抵抗があります。  ごく最近、我家では、もう1台のタンク設置し、元々のタンクとはホースで継くことにより 子タンクとして合計500リットルの雨水を蓄えることが出来るようになりました。
 この2台のタンクの水位は当然ながら「水平」、昔の水盛り遣り方を思い出します。


雨水タンクで、ダムがいくつ不要になる

 皆さんもよくご存知と思いますが、雨が何ミリ降る、というのは、1時間に1m2の広さに何ミリ貯る という意味です。ですから1本の雨樋が受持つ屋根面積が仮に30m2として、1時間に10ミリの 雨が降ったとしますと0.3m3で、250リットルのタンクはオーバー状態になります。
 ところで世界の国々に降る雨の量は大変な差があり驚かされます。平均雨量が一番多いのが、 インドネシアで、年間2,900ミリ、2位がフィリピンの2,700ミリ。日本は1,900ミリで、 ニュージーランドに次ぐ世界第4位です。反対に雨量の少ないのが、エジプト、クウェート、 サウジアラビアなどの100ミリ前後となっています。石油資源の豊富なこれらの国々も実は水には 不自由を余儀なくされいるようで、神様のなさることは結構バランスが取れていると言えますね。
 ちなみに米国は800ミリ。世界平均が1,100ミリですから、日本には世界平均の1.7倍の 雨が降っていることになります。 折角の天の恵みを、ただ雨樋から側溝へ、川から海へと無条件で 捨ててしまうのは実にもったいない気がします。
 中日新聞、12年4月9日のサンデー版、「見直し迫る公共事業」によりますと、 現在、日本中には構想も含めて、計30ヶ所のダムが計画されております。これらを造るのには小さい所で数百億円、 大きい所では2.3千億円の費用が掛ります。もし、日本の家屋の10%に雨水タンクを設置して、 天の恵みを利用したら、これらのダムをいくつ減らせることが出来るでしょう。 これは積算資格者の我々でも分からないと思います。
でも、こんなことを言うと、これらダム建設の受注を狙っているゼネコンさんから私は睨まれる ことでしょう。

自然エネルギーの利用は世界の風潮

 ここ近年の石油や石炭などの化石資源に頼るエネルギー事情への反省から、自然エネルギーを 利用することとの重要性が叫ばれるようになりました。
 我が三重県でも、津市のお隣の久居市という自治体が、いち早く風力発電に取り組み、青山高原の山頂付近に、直径50mの風車が 4台クルクルと、ゆっくり回って電気を作っております。コスト的には家庭用の太陽光発電で200〜300万円、風力発電に いたっては10億円単位の費用が掛るそうで、どちらも我々に手の届くモノではありません。
これに比べ、同じ天の恵みでも、雨水利用は極僅かの初期投資だけで故障も無く、ずっと楽しむ ことが出来ます。水道代の節約分と、投資額との採算は多少合わなくとも、雨降りを楽しみに 出来るという風流はなかなか他では味わうことが出来ないと私は満足しています。 ガーデニング趣味の方にはうってつけではいでしょうか。
 最後の絵は私の会社の雨樋の下に設置した簡易型タンクです。これは専ら洗車用に利用して おります。
   今回も積算とは縁遠い記事で大変恐縮です。最後まで読んで下さり有難うございました。